小林(以下Boss)「明日、ガツ君とナベで、仕事でお付き合いしているKさんの別荘の周りの草刈りとキンモクセイ1本の伐採で伊東の現場に行ってきてくれ! Kさんの話だと多分2人で大丈夫らしい!急だったし、現場が遠いから俺自身現場見てないけど」
それは、突然言い放たれた。
Boss 「念のため、俺も見積もり一件終わらせたら合流するから」
ガツ君 「あ、はい」
ナベ 「解りました」
この時、Boss小林が感じた一抹の不安が間違いではなかったことは、まだ誰も知らない。
伊東と言えば、ハトヤホテルが有名な、あの伊東だ。サンハトヤという同系列のホテルもあるのだ。
遠い所だ。
二人は、明朝の朝早い時間の出勤に不安を隠しきれないまま、その日の作業を終え、明日に供え、早々に帰宅した。
8月31日土曜日
朝5時28分、眠い目を擦りながらも会社駐車場に2人は集合した。
これから、伊東に向け出発だ。
駐車場を出て東京インターから東名高速道路へ
高速に乗り、高速走行が義務づけられている高速域まで車を加速した。
この時2人の中にあった前日からの不安は、もう無い。
車を快適な速度で走らせている。
・・・思っていたより、気分も悪くはない。
いやっ!だんだんと近づいてくる山、海の景色に・・・自然と2人共気分が良くなっていた。
それもそうだろう、東京と言う大都会で、日々何かに追われるような時間の流れの中、コンクリートジャングルしかない様な無機質なところにポツンとあるオアシスのような木々があるところで仕事をしているのだから。
ガツ君 「うお!海だ!Fu〜〜〜!」
ナベ 「いや〜!良いですね!!」
ガツ君 「これさ、帰り土産屋に寄らない?Fu〜〜〜!」
ナベ 「賛成です!じゃ〜俺、温泉とか入っちゃって良いですか!?」
ガツ君 「良いね!良いね!海とかにも寄って行こうよ!Fu〜〜〜!熱海も花火大会するんだね!」
ナベ 「何か気分が上がりますね!!」
などと2人で、混み上がる上場気分のままの会話を楽しみながら、現場に急ぐ。
東京を出発して2時間、高速も降り、伊東市の現場近くまで来た。
ここで、ちょっとした事態が・・・何と道を間違えたのである。
差し迫る開始時間。 2人とも、少し焦りの色が出る。
ガツ君 「ナベちゃん!今の所、戻ろう!」
ナベ 「はい!解りました!じゃ、そこでUターンしますね!」
運転をしていたのは、ナベ。
ナベはUターン禁止区域ではないことを確認した上で車の進行方向を来た道に戻した。
車の向きを戻したと同時に、進行方向の信号機が赤に。
信号待ちをしていると、隣のガツ君がナベに、こう言った。
ガツ君 「ねぇ、ナベちゃん・・・・」
ナベ 「はい?」
ガツ君 「何か、あのおばぁさん、手・・・振ってる」
ナベ 「えっ!?・・・本当だ」
そのおばぁさんは、左手にススキを抱え右手で2人に手を振っていた。
なんだろうと思いながらも2人は、そのおばぁさんに笑顔で手を振り返した。
すると、おばぁさんの手の動きが一層激しくなった。
ここで進行方向の信号機が青になる。
前進だ。2人とも、おばぁさんにお辞儀をし、その場を後に。
実は、少し恐った。
現場近くに着くと、既に別件の見積もりを終えて、別の車で来ていたBossが待っていた。
2人 「おはよう御座います!」
Boss 「おはよー・・さ・・先に現場見てきたよ・・・」
ガツ君 「現場どうでした?」
Boss 「ん?・・・うん」
ナベ 「?」
ガツ君 「?」
Boss 「・・・よし、行こう」
2人 「?・・・はい・・」
Bossは、現場の状況に関して多くを語ろうとはしなかった。2人に目も合わせようともしない。
何故なのか、2人は少し不安を覚えた。
そしてBossは、目と鼻先にある現場へ車を走らした、その後を2人の乗った車がついて行く。
別荘らしき建物が近づいてくる。
ガツ君 「あれじゃない?」
ナベ 「あーー!ぽいですね!キンモクセイが見え・・・・」
ここで2人の会話が止まる。
それは間違いなくターゲットとしていた、Kさんの別荘のキンモクセイではあったが、当初Kさんから聞いていたキンモクセイのサイズとかけ離れていた。
2人はその威風堂々とそびえ立つキンモクセイの大きさに、驚きのあまり、鼻水が出た。
現場に着き、車を停める。
2人は不安を隠しきれず、Bossの顔を覗き見る。が・・・Bossは無言で何かを堪えるような表情を浮かべている。
Boss 「よし!!・・・さぁ、やろう!! 笑顔」
Bossは、自らを固持するかのように気合いを入れ、2人に号令を出した。
号令を聞いた2人は、それを察した。
2人 「は・・はいっ!! 笑顔」
・・・8月31日土曜日、この日の伊東市の気温36℃
刺す様な日差し、滝のように流れる汗、そして枝ゴミを運び出すための通路が4〜50段の急な階段を使用しなくてはならない過酷な状況の中、三人はひたすら無言のまま作業を続けたのであった。
その後、彼らがどうなってしまったのか、誰も知らない。
おしまい
おまけ
帰りの車中
行きの気分上々は無し・・・くたくたで帰る
この暗さでまだ、ビーチライン
※この物語はフィクション!?です。